ねぇ管理人さん!
最近フランス語の勉強を始めた僕の友達が「フランス語にはよく英語と同じ綴りが出てくるよね」って言っていたんだ。
確かに、la table(テーブル)、l’image(イメージ)、la culture(文化)、le train(電車)など、英語と同じ綴りの単語がとてもたくさんあると思うのだけど、どうしてなのか知っている?
エリソン君のお友達は、とても良いところに気が付いたね!
実は英語の語彙の60%近くは、フランス語あるいはラテン語からの借用語と言われているんだけど、フランス語がラテン語を起源とする一方で、英語はゲルマン語を起源に持つから、元々両言語は異なる起源を持つ言葉なんだ。
なのにここまで英語の中にフランス語・ラテン語の言葉が入っているのは、1066年のノルマン・コンクエストが影響していると言われているよ。
じゃあ今日の記事では「フランス語と英語の関係性」について、歴史的な視点から解説してみようかな!
うわぁ!
ありがとう管理人さん♪
1. 現代英語の語彙の約50~60%はフランス語・ラテン語起源
冒頭でもお伝えした通り、現代英語の語彙の50~60%はフランス語及びラテン語からの借用語と言われています。
現代英単語の50~60%は実はフランス語・ラテン語から来ている📚
1-1. 実はフランス語・ラテン語が由来となっている語彙
本当に一例だけど、現代英語でも使われているフランス語・ラテン語が由来となっている単語を紹介するよ。
<現代英語でも使用されているフランス語・ラテン語の単語>
・La Table(テーブル)
・L’image(イメージ)
・La politique(政治)
・L’attention(注意)
・La constitution(構成・憲法)
・Le service(サービス)
・Le style(スタイル)
・Le train(電車)
・La culture(文化)
・Le journal(新聞)
などなど
こうやって並べてみると、本当にたくさんの単語が英語に取り入れられていることが分かるねぇ♪
<フランス語はロマンス語の一種>
ロマンス語というのは、古代ローマ帝国の口語ラテン語が、帝国滅亡後にそれぞれの地域ごとに独自の変化を遂げて成立した諸言語の総称です。
フランス語の他に、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語などがこのロマンス語に含まれます。
ロマンス語はラテン語を母親とする姉妹のような言語なので、語彙も文法も良く似ているという特徴があります。
2. 元々英語はラテン語系ではなくゲルマン語系
フランス語がラテン語に起源を持つ一方で、英語はゲルマン語に起源を持ちます。
ラテン語もゲルマン語も、「インド=ヨーロッパ語族」という同じ言語系統の所属にはなるのだけど、同じ系統とはいえ、両言語はかなり異なる言語になるよ。
英語はゲルマン語を起源に持つ!
2-1. 代表的なゲルマン語系の言語
ゲルマン語はさらに西ゲルマン語群と北ゲルマン語群に分けることができ、それぞれ西と北は以下の言語の起源となっています。
<西ゲルマン語群に属する言語>
・ドイツ語
・オランダ語
・英語
<北ゲルマン語群に属する言語>
・ノルウェー語
・アイスランド語
・デンマーク語
・スウェーデン語
ゲルマン語族は、英語の他にはドイツ・オランダ、そして北欧の言語に起源になっているみたいだね!
3. 1066年ノルマン・コンクエストによりフランス語がイギリスへ
どうしてゲルマン語を起源とする英語に、ラテン語を起源とするフランス語の単語がここまで使用されているのか?
それには、1066年に起こった「ノルマン・コンクエスト」という歴史的な出来事が大きく関わっているよ。
英語がフランス語の影響を受けるきっかけとなったのは
1066年のノルマン・コンクエストだった!
3-1. ノルマン・コンクエストとは?
ノルマン・コンクエストとは、イギリス王朝の王位継承権を主張したノルマンディー公ウィリアムによるイングランドが征服された出来事を指します。
ノルマンディー公ウィリアムとは、当時フランスのノルマンディー公国(ノルマンディー地方)を統治していたヴァイキングの子孫です。
彼はこの出来事をきっかけにイギリス国王ウィリアム1世となり、ノルマン朝を創始。
同時にノルマンディー公国から約2万人のノルマン人がイギリスに渡り、イギリス社会の重要な地位を独占することになったよ。
以後、14世紀の半ばまで、イギリスでは政治・裁判・教会などの公的な場において、フランス語が使われることになったんだ。
これによって、イギリス社会に大量のフランス語が入り込んでくることになるよ。
3-2. ノルマンディー公ウィリアムはフランス語を話していた
1066年にそんな出来事があったんだね。
でも、ノルマンディー公ウィリアムはどうして自分たちの言語であるヴァイキングの言葉をイギリスに持ち込まなかったのかな?
とっても良い質問だね!
実はノルマンディー公ウィリアムは元々フランス語を母語として話す人だったんだ!
ノルマンディー公ウィリアムというのは英語名(Willian, Duke of Normandy)であり、フランスでは「征服王ギヨーム:Guillaume le Conquérant」で親しまれているんだよ。
ああ、そうだんだったね!
それなら、納得!
彼の祖先である徒歩王ロロがノルマンディー公国を創始したのが、8世紀初期(911年)。
ノルマンディー公国は「当時のフランス王室を他のヴァイキングの襲撃から守ることを条件に設立を許可された国」だったので、徒歩王ロロはキリスト教に改宗し、フランス語も取り入れました。
だから彼の子孫であるノルマンディー公ウィリアムはフランス語話者だったのです。
3-3. 入ってきたフランス語の単語はおよそ1万語
ノルマン・コンクエストをきっかけとして、以後15世紀頃までに、イギリス社会におよそ1万語ほどのフランス語が取り入れられ、更にそのうちの約7,500語が、現代英語に伝わっていると言われています。
「言語は単なる意思疎通の手段ではなく、その国の文化や社会通念も示している」と、現代社会でも言ったりするけれど、それは昔から変わっていなくて、「征服する側が支配される側の国民に対して真っ先に実施することが、まさに言語政策」だったんだ。
支配者の言葉である「フランス語」を通じて、支配者側の言葉だけでなく、文化的慣習や社会通念もイギリス側に広めようとしたのかもしれないね。
3-4. フランス語は支配階級、英語は庶民の言葉に
言語政策を施したといっても、「学校」などの教育機関がきちんと整備されていなかったこともあり、フランス語は高等教育を受けられる「王侯貴族」や「教会の高位聖職者」には浸透していきましたが、イギリス住民のほとんどはフランス語を話さず、英語(現代で言う古英語)を話していたそうです。
そのため、英語は消滅はせず、「庶民の言葉」としてイギリスに残り続けました。
ただ、公式な場で用いられる言語であったフランス語は「支配階級の言葉」+「書き言葉」としての地位を築いていったため、現代英語に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。
当時の英語(古英語)には、今のドイツ語と同様に「男性名詞」・「女性名詞」・「中性名詞」があったんだよ。
それから、主語ごとに動詞の活用が有り、更には形容詞も各変化や性数一致をしていたんだ。
※英語史においてはこれらの変化を「屈折」と呼ぶそうな。
そうだったんだ!
でも、今の英語はドイツ語ほどの活用は無いし、名詞に性別は無いよね?
エリソン君に言う通り、今の英語=現代英語は、古英語と比較して相当程度簡略化されていると言われているよ。
元々、ノルマンディー公ウィリアムに支配される前に、既にヴァイキングとの接触よって古英語の簡略化は始まっていたんだけど、1066年のノルマン・コンクエストによってさらにこの簡略化は加速していったと言われているんだ。
「庶民の言葉=書き言葉でなくなった英語」は、どんどんと変化・簡略化していき、今の形に近づいていったそうです。
英語史的には、ノルマン・コンクエスト後から15世紀後半頃までの英語を「中英語」というそうな。
3-5. 英仏百年戦争終結(1453年)までこの状況は続いた
フランス語がイギリスの上流階級の間で話されるという状況は、英仏百年戦争が終結する1453年まで続きました。
この戦争にイギリス側が敗れたことによって、イギリスはフランスにおける領土のほとんどを失ってしまい、フランスとの関係が途切れることになったんだよ。
ちなみに、ノルマン朝の次のイギリス王朝であるプランタジネット朝の最後の王様はリチャード2世(1367-1400)というのだけど、ノルマン・コンクエストから彼の時代まで、歴代のイギリス王の母語はずっとフランス語だったんだ。
そうだったんだね。
1066年から1453年までだから、およそ400年に亘ってイギリス王家とフランス語は密接な関係にあったんだね。
英語がフランス語から色々な影響を受けるのも当然だなって思ったよ。
<食肉はフランス語、動物は英語本来の語彙>
1066年から1453年までにイギリス社会に入ってきたフランス語はたくさんあり、例を挙げればきりがありませんが、身近なもので言うと、例えばお肉。
当時フランス語を使用していたのは「支配階級」、英語を使用していたのは「庶民」でした。「支配階級」はお肉を食べ、「庶民」は家畜を育てていました。
そのため、現代英語においても「食用の肉」の多くはフランス語に由来しており、家畜・動物は英語本来の語彙を使うケースが多いです。
【例】
・牛肉 beef=le bœuf、牛 ox≠la vache
・豚肉 Pork=le porc、豚 pig≠le cochon
・羊肉 mutton=le mouton、羊 sheep=le mouton
4. フランス語の単語を知る=英単語の語源を知る
これまで見てきた通り、フランス語は英語に対してとても大きな影響を与えてきました。
「食肉」以外にも、フランス語が語源となっている英単語は多く、フランス語の単語を勉強することが、知らず知らずのうちに「英単語の語源を勉強することに繋がっている」というケースは少なくありません。
そうなんだ!
じゃあ、フランス語を勉強って、英語学習にもすごく役立っちゃうってこと!?
「全てがすごく役立つ」ということが言えるかどうかは分からないけど、英単語にはフランス語を語源としているものが本当に多いから、その英単語を覚えることでフランス語の単語の意味も覚えられるし、勿論その逆もしかり!
だから、「少なくとも語彙」に関しては、「一石二鳥」になることが多いんじゃないかな?
例えば、フランス語によく出てくる「アクソン・シルコンフレックスの意味」って知っている?
えっ!?
「アクソン・シルコンフレックス」に意味なんてあるの?
全然知らなかった!
教えて!
<知ってた?アクソン・シルコンフレックスの意味>
アクソン・シルコンフレックスは、「アクソン・シルコンフレックスの後ろには、元々アルファベットの S がありました」ということを表していています。
例えば、L’hôpital。実は L’hôpitalは、元々 L’hospitalと記述する単語だったんです。そして、L’hospitalに似た現代英語の英単語と言えば、hospital(病院)ですね。
ここから、hospitalという英単語は、実はフランス語が語源となっていることが分かります。というわけで、我々は知らず知らずのうちに、英単語の語源を勉強していたということになるんですね。
【例】
・L’hôpital=Hospital
・La tempête=Tempest
・La conquête=Conquest
・La Forêt=Forest
まとめ:フランス語と英語の関係性は深く、語源の学習に繋がる!
義務教育で英語を習い、かつ各々の理由でフランス語を学習している我々は、なんと知らず知らずにうちに「とても関係性の深い2つの言語を勉強していた!」ということが分かりました!
かつての管理人のように、「英語はあまり得意でないから、好きじゃない」と、英語を遠ざけていた人は、これは気に英語の勉強を再開してみてはいかがでしょうか?
「フランス語を勉強している自分は、英語学習において有利な立場にあるのかもしれない…」という風に思えれば、こっちのもの!
きっと、これまでとは違った「モチベーション」で、英語学習にも臨めると思います♪
À très bientôt
Kei
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