ねぇ管理人さん!
日本ではご飯を食べる前に「いただきます」って言うよね!?
フランス語にはその「いただきます」っていう言葉が無いって聞いたんだけど、それって本当なの?
エリソン君の言う通り、実はフランス語には「いただきます」という言葉がありません。
では、フランス語では「いただきます」の代わりに、食事の時になんと言うのでしょうか?
今回の記事では、フランス語で「頂きますの代わりに用いられる表現」に加えて、「なぜフランスではいただきますという言葉が無いのか」ということについて、ご紹介させて頂きます。
今回の記事を読むことで、明日フランス語仲間にちょっと自慢できるであろう、フランスと日本の風習の違いに関するトリビアについて知ることができますよ!
1. フランス語には「いただきます」と言う習慣はありません
冒頭でも述べた通り、フランス語には食事の前に「いただきます」と言ってから食べるという習慣はありません。
表現として無理やり言うなら、Je me permets de manger (ジュ ム ペルメ ドゥ マンジェ:「私は私自身が食べることを許す=食べさせていただきます」)などと言えなくもないですが、とっても不自然です。
その代わりと言っては何ですが、フランス語は「いただきます」の代わりにこれから食事を食べようとしている相手に対して投げかける言葉があります。
2. フランス語では「いただきます」の代わりに「召し上がれ」を使う
フランス語では、自分が食事を食べようとする時に「いただきます」という代わりに、これから食事を食べようとしている人に対して「召し上がれ」という言葉を投げかける習慣があります。
この章では、以下の3つを詳しく見ていきながら、この「召し上がれ」という表現に対する理解を深めていきます。
- 「召し上がれ」の代表的な言い方
- フランス語の「召し上がれ」の本来の意味
- フランス語の「召し上がれ」の歴史
2-1. 「召し上がれ」の代表的な言い方
フランス語で「召し上がれ」とは Bon appétit(ボナペティ)と言います。
カフェで食事をサーブしてくれた店員さんが笑顔で ≪Bon appétit !≫と言ってくれたり、友人たちとピザを取って一緒に夕食を食べる時などに ≪Bon appétit !≫ と言って食事を促してくれたりします。
来日してくれたフランス人観光客をレストランに連れて行ったりした時に、食事に前に皆さんに ≪Bon appétit !≫ と言うと、皆さん笑顔で ≪Merci !≫ と答えてくれます!
2-2. Bon appétit の本来の意味
appétit (アペティ)とは、元々は「食欲」という意味の男性名詞です。
この Appétitの前にBon (ボン)という「良い」を意味する形容詞を持ってきて、直訳としては「良い食欲を」。
そこから、使われ方や周囲の反応を考慮した上で「召し上がれ」という訳語が与えられました。
2-3. 元々あまり良い言い方ではなかった?
フランスの有名な新聞社の一つである LE FIGARO にて、面白い記事を見つけました。
«Bon courage», «bonne chance», «bon déroulement gastrique» … eh oui, c’est comme ça que se définit notre traditionnel «bon appétit». «Bon courage», «bonne chance» supposent que les mets concoctés paraissent difficilement comestibles. Coup dur pour la maîtresse de maison! «Bon déroulement gastrique», nous rappelle à notre animalité en faisant allusion à ce qui se passe dans notre ventre. On comprend alors que ce ne soit ni très poli, ni très élégant.
出典:LE FIGARO « Bon appétit » : ne faites plus la faute !
要約はこんな感じです。
≪bon appétit≫は「頑張って」とか「幸運を」とか「良い消化を」というように定義される。「頑張って」とか「幸運を」という言葉は、用意された食事が食べにくい(消化されにくい)ということを思わせるし、「良い消化を」に至っては、我々の胃の中で起こるであろう動物的な行為を想起させる。以上のことから、これらの表現が、礼儀正しくもなければ、上品でないことも分かるだろう。
LE FIGAROの記者の言い分としては、『≪bon appétit≫は、昔はこんな感じで食べにくい食事を前にして、「頑張って食べるんだぞ!」・「お前の胃がちゃんと働くように幸運を祈ってるぜ!」という意味で使われていたんだから、元来礼儀正しくもなければ、上品な言葉でもないんだぜ』ということが言いたいのだと思います。
ちゃんとした出典や参考資料が明記されていないので、どこまで本当かは分かりませんが、まぁこの話が本当であったとしても、嘘であったとしても、少なくとも管理人と同じ世代(36歳前後)は≪bon appétit≫をポジティブな表現をして使っていますので、あまり気にしなくとも良いかなと思います。
ただ、語源に関する逸話としては面白いですよね。
3. どうしてフランス語には「いただきます」が無いのか?
この章では、もう一度話を「いただきます」に戻します。
フランスでは「いただきます」とは言わないけれど、代わりに「召し上がれ」を周囲に投げかけるということが分かりました。
でも、どうしてそもそもフランス語には「いただきます」と言う習慣が無いのでしょうか。
その答えは、なんと日本文化の中にありました!
3-1.実は「いただきます」は日本独特の文化的慣習
実はPRESIDENT Onlineの記事の中で、食文化史研究家である永山久夫氏は以下の様に説いています。
じつは、食前の「いただきます」は日本特有の挨拶であり、まったく同じ意味の言葉は外国のどこを探しても見当たりません。
出典:PRESIDENT Online 「いただきます」に該当する外国語はない食材に感謝するのは日本特有の概念
!!!???
えっ!?
どういうこと!?
つまり、食事の前に「いただきます」という言葉を発するのは、日本独特の風習であるから、他の国々では「いただきます」という言葉が無いのは当たり前ということです。
3-2. 「いただく」は稲作の神様への感謝の言葉
永山氏によると、実は『「いただきます」の「いただく」という言葉は、山の頂に宿る稲作の神様への感謝の心を表す言葉に由来する』そうです。
神山が宿ると言われていた山の頂上を、日本語では「頂(いただき)」と言います。
その事から、「頂く」・「戴く」と言った言葉は、大切なものを頭の上に強い敬意をもって捧げ持つ言葉に変わっていったそうです。
3-3. 「いただく」は「押し頂く」という言葉から生まれた
中世以降、位の高い人からの贈り物や、神仏えのお供え物を食べる時には、「押し頂く」動作をしてかから食べたため、「食べる」「もらう」の謙譲語として「いただく」が使われるようになり、やがて食事前の挨拶「いただきます」として定着していったそうです。
この「いただきます」が定着した頃には、「全てのものの命を頂くことで、自分が生かされているということへの感謝」と、「食事の準備をしてくれたり、配膳をしてくれた人への感謝」の2つを示すために使用されていたとのことでした。
3-4. フランスには「いただきます」は無いのが当たり前
というわけで、食文化史研究家である永山氏の説明を論拠とするならば、以下のようになります。
- 「いただきます」は日本独特の風習
- フランスを含む海外に「いただきます」という言葉が無いは、寧ろ当たり前
なんともに意外な理由を見つけてしまったものです…。
まとめ:「いただきます」は寧ろ日本独特の慣習だった
今回の記事では、こんな内容を紹介しました。
- フランス語に「いただきます」と言う習慣はない
- フランス語では「いただきます」の代わりに「召し上がれ」と言う
- 「いただきます」は日本独特の風習なので、他国に「いただきます」が無いことは普通である。
日本人の我々からしてみれば、「いただきます」と言うことは当たり前だから、「当然海外にも同じ風習があるでしょう!」と思いがちです。
が、実際は「いただきます」は日本独特の風習ということなので、そりぁ「いただきます」がフランスに無いことも当たり前なわけですね。
いや~、自国の文化を客観視することって大切ですよね。
そういった作業を通じて、よりお互いの国のことが理解できるようになるだと思います。
À très bientôt
Kei
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