フランス語を使って仕事をしている方へのインタビュー企画!
4回目となる今回は、フランス・リヨンにお住まいのReiko VACHOT-INUKAI(犬飼玲子)さんです。
Reikoさんとは、仕事を通じて知り合いました。
フランスの某地域からの行政使節団が日本でとあるミッションを達成するために来日されたのですが、Reikoさんはその使節団の通訳として同行されていました。
実は管理人はその使節団には行程・旅行手配のコーディネーターという形で同行をしていました。
最初の出会いは「お客様」と「現地コーディネーター」という関係でしたが、今では良き友人兼共に使節団のミッション達成のために奮闘した戦友です!
インタビュー内容に入る前に、まずは初めての方向けに管理人の自己紹介をさせて下さい。
1. Reikoさんのプロフィール~大学ではなんとアラビア語を専攻~
Reikoさんは大阪外国語大学(現、大阪大学)の外国語学部をご卒業。
なんとご所属の学科はアラビア語学科でした!
管理人はReikoさんはてっきりフランス語学科だと思っていたので、この話を伺った時はビックリしました。
第一外国語がアラビア語、第二外国語が英語、第三外国語がフランス語だったそうです。
Reikoさんは元々語学に関心があり、アラビア語学科への入学の決め手は以下の4点でした。
- アラビア語は国連の公用語であった。
※厳密には、総会・安全保障理事会・経済社会理事会でのみ公用語。 - NHKラジオ講座にアラビア語がなかったため、簡単に学ぶことができない言語であった。
- アラビア語はセム系の言語であり、Reikoさんにとってあまり馴染みがなく新鮮であった。
- アラビア語が出来れば、将来の仕事に困らない。
※商社の資源関係の仕事や石油関係の会社に就職できるだろうと思っていた。
ですが、入学2ヶ月後。
Reikoさんは「アラビア語が話される社会は基本的に男性社会である!」ということに気がつき、アラビア語への興味が薄れてしまったそうです。
Reikoさんは元々語学に関心をお持ちだったということもあり、3年生からは気持ちは言語学を向いて行きました。
語学の必修科目がほとんどなくなる大学4年時には、アラビア語関係の授業は卒論に関するゼミだけになっていたそうです。
大学卒業後は、アメリカ系の銀行に入行。
その後、大学の卒業記念としてイギリスへ短期語学留学に行った際に知り合ったフランス人男性(当時はパリ在住)とのご結婚を経て、1年程度で銀行を退職し、渡仏されます。
旦那さんの転勤によりランス近郊のエペルネー(モエ・エ・シャンドンの発祥地)、パリ、ナント、リヨンと住む場所を転々。
その傍らで、ランス大学の外国人向けフランス語講座を受講し、さらにパリ第七大学に言語学の博士課程まで通われる一方で、非常勤で現地の高校・中学で日本語教師を務められたそうです。
Reikoさんは大阪外国語大学在学中に、高校の英語の教員資格を取得。
加えて、渡仏前にカルチャーセンターの日本語講師養成講座も修了されていました。
そして、ある日グランゼコールであるScience Po Lyon(リヨン政治学院)から
日本語の非常勤教師のオファーが!
そのオファーを受けるためには、社会保険等の関係で本業として別の会社に所属している必要があったため、翻訳・通訳者の個人事業主として独立。
ちなみに、独立をする前に、リヨンで小規模の翻訳・通訳会社にご就職をされましたが、運の悪いことにこの会社は入社後6ヶ月で経営縮小となり解雇されてしまったそうです。
2. Reikoさんの現在のお仕事~仏日・日仏の翻訳・通訳者
というわけで、Reikoさんの現在、仏日・日仏通訳・翻訳家としてご活躍をされています!
今年で事業を興されて12年目となるそうです!
すごいですね!
最初のお客様はなんと旦那さんのお勤め先!
旦那さんのお勤め先で研究開発を行う際、偶然にも日本の特許文書の内容を理解する必要があり、日本語の特許文書をフランス語に翻訳する仕事をReikoさんが受注することとなったそうです。
起業をするに当たり、商工会議所から「3年目から様々な法人税の免除・減額が無くなるので、逆に言うと3年以上続けば、その後も事業を継続していけるだろう」というアドバイスを受けられたReikoさん。
まぁ翻訳・通訳一本で食べていくというよりか、Science Po Lyonの日本語非常勤教師をしながら、たまに翻訳・通訳の仕事が出来たらよいかな。
と、あくまでも翻訳の仕事は副業として考えられていたそうです。
ただ、
- 一度案件を受けたお客様がリピーターとなってくれたり…
- お客様が他のお客様を紹介してくれたり…
- 企業主催のイベントで通訳をするReikoさんの姿を見た来場者がReikoさんに通訳の仕事を依頼してくれたり…
といった感じで、Reikoさんは既に1年目からかなり仕事があっただけでなく、2年目には忙しくなってきて、3年目には「もう翻訳・通訳の仕事を中心にやって行こう」と思うようになったとのこと。
管理人もサイトで幾らか稼げることはありますが、「個人で何かをやって、しかもお金を稼ぐ!」って、本当に大変です。
なので、Reikoさんは普通にめっちゃくちゃすごいと思います!
「Reikoさんのこの成功の秘訣は何だったのだろう」
と気になった管理人は、Reikoさんがお仕事で大切にされていることを聞いてみました。
その質問に対してのReikoさんの回答は以下の3つでした。
- 納期を守ること
- 高いクオリティを維持すること
- 人を尊重すること
Reikoさん、最後の「人を尊重すること」って、具体的にどういうことですか?
クライアントが仕事をしやすいように振る舞うということです。
通訳者は黒衣であって、主役ではありません。
主役はあくまでクライアントで、彼らに満足してもらうことが一番です。
その場の雰囲気や、クライアントの性格・気質に配慮しながら、(日本人とフランス人の)それぞれにとって分かりやすい言葉で伝える。
予定外のことが起こっても、クライアントの都合に合わせて臨機応変に対応する。
通訳者が自分の我を出したり、変にしゃしゃり出たりせず、常にクライアントを満足させることを考えるということが大切だと思って、日々仕事をしています
なるほど!
これはまさにReikoさんの仕事の哲学ですね!
実は冒頭で述べたフランス某地域からの行政使節団ですが、今まで同様のミッションで3回来日しています。
そして、Reikoさんは使節団の通訳として、毎回ミッションに同行されているんです。
通訳としての高い能力だけでなくクライアントの満足のため、まさに使節団の一員として彼らのミッションを成功に導くべくベストを尽くす姿勢に、この使節団はきっと心を奪われたに違いありません。
3. Reikoさんのフランス語の勉強方法
ここでは、Reikoさんのフランス語の勉強方法についてご紹介します。
社会人1年目の夏休みに、大学の卒業旅行で知り合ったフランス人(現在の夫)を訪ねて、パリに行ったことをきっかけとして、帰国後はアリアンス・フランセーズに週一回(土曜日に3時間の授業)程度通いました。
それから、NHKのラジオ講座もやり始めましたね。
Reikoさんはおよそ1年~1年半年ほど、上記の方法でフランス語の勉強を続けた後、結婚を境に渡仏。
ランス近郊のエペルネーに住むことになったReikoさんは、ランス大学で外国人のためのフランス語の授業を受講されます。
こちらの授業は、なんと1日7時間!
宿題もたくさん出され、フランス語漬けの日々を送られたとのこと。
いやはや、すごいですね。
ちなみに、フランス語の宿題は毎回文法練習問題がA4プリント何枚もあったそうです。
最初の宿題は名詞のリストにひたすら不定冠詞をつけるという問題で、ほぼ知らない単語ばかりでめまいがしそうになりました。
全部を辞書で調べる気力がなくて、夫に聞いてなんとかこなしていた記憶があります。
Reikoさんは会話の訓練も積極的に行っていました。
具体的には、同じ外国人用の授業を受講しているクラスメートに積極的に話しかけたそうです。
相手も自分と同じレベルのフランス語力だし、そもそもネイティブではないから、「間違っていて当然」という気持ちでリラックスして話すことが出来ました。
なので、個人的には、会話の訓練は別にネイティブでなくても良いと思います。
それよりも、習ったことをきちんと復習したり、今日あったことをフランス語で説明してみたり、きちんとアウトプットすることの方が大切だと思います
- フランスに住んでいる
- 旦那さんがフランス人
- フランスの大学で外国人用のフランス語の講義を受けられた
という、環境的な要因もあったとは思います。
ですが、事実としてReikoさんが短期間に圧倒的な量をインプットするだけでなく、
アウトプットもしていました。
社会人になると中々まとまった時間を確保することは難しいため、Reikoさんのように短期間でまとまった量をこなすことは簡単では無いと思います。
でも、語学の習得において総学習時間が影響していることは紛れもない事実です。
忙しいと言うことを言い訳にせず、
隙間時間を活かして継続的に勉強することが大切だと思います。
4. Reikoさんからフランコフォンの皆さんへのメッセージ
まずは文法をキチンと学んで欲しいです。
そして、それと同時に「生のフランス語」もドンドン聞いて欲しい。
4-1. 少しでもフランス語を聞き取れた時の嬉しさをもっと味わって!
生のフランス語を聞いて、全ての内容を理解できないのはある意味当然なんです。
だって日本語であっても、自分たちに馴染みのない分野の話は、会話を聞き取ることはできても、内容を正確に理解することは簡単ではありません。
だからまず、「全部聞き取らないといけない」・「全部内容を理解できないといけない」と考えるのは辞めた方が良いと思います。
私はそれって、ある種の強迫観念か何かだと思う。
日本語でさえ難しいんですから、それをフランス語で聞き取って、しかも理解するなんて、難しいに決まっているんです。
だから、「聞き取れなくて当然」っていうくらいの軽い気持ちで臨んで、取りあえず生のフランス語に触れてみる。
すると、会話の節々は聞き取れなくても、何か一つ知っている単語が聞き取れたり、何について話しているのかくらいは分かったりします。
そうやって何か聞き取れた時の「嬉しさ」を、皆さんにもっと味わって欲しいです。
4-2. 100%相手の言っていることを聞き取る必要はありません。
言葉はコミュニケーションの手段ですから、自分の取りたい情報が取れて、伝えたいことが伝えられればそれで良いんです。
相手の言っていることを一字一句聞き逃さず、全ての会話を100%相手の意図を汲んで理解する必要はほとんどありません。
文法をきちんと学び終えたら、絶対に何かしら聞き取れるところ、分かるところがあります。
ポジティブになって、ドンドン体当たりしていって下さい!
Reikoさんのお言葉を聞いて、管理人もなんだか肩の荷が下りました。
というのも、管理人も
これだけフランス語をやってきたのだから、友人の会話やラジオの内容はきちんと理解しないと行けない!
と、勝手に自分を追い込んでいたからです。
Reikoさんの仰る通り、たとえ日本語であっても、
自分がよく知らない分野の話って簡単には理解できないですよね。
それなのに、それを外国語であるフランス語に求めるなんて、そもそもお門違いだったなと思いました。
Reikoさんの仰る通り、
「聞き取れない、理解できないのはそもそも当たり前!にもかかわらず、今日はこんなに聞き取れた!こんな自分ってすごい!」
という形で、日々ポジティブに受け止めながらドンドンと挑戦をしていった方が、きっとフランス語を学ぶ事が楽しくなるし、上達も早くなると思いました!
このフランス語のキャリアパス企画…実はインタビューをさせてもらっている管理人が一番多くのことを学ばせてもらっています。
À très bientôt
Kei
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