第3回フランス語人材のキャリアパス~N.T.さん(フランス政府系のお仕事)~

フランス語を使って仕事をしている方にインタビューをするという本企画は、今回で三回目!

今回は東京都にお住まいのN.T.さん(仮名)にインタビューをさせて頂きました。

N.T.さんとは、N.T.のお仕事を通じて知り合いになり、今回のインタビュー企画へのご協力を(厚かましくも(笑))お願いしたところ、快く引き受けて下さいました。

まずはインタビュー記事に入る前に、初めての方向けに管理人の自己紹介をさせて下さい。

管理人のプロフィール
  1. 東京生まれ東京育ち、仕事の都合で現在関西在住の36才。
  2. 大学生の頃にパリへの交換留学を経験(約1年間)。
  3. インバウンド業界で8年以上、日々フランス語と英語を使って仕事をしている。
  4. DELF B2(フランス語)・ TOEIC 825(英語)
  5. アンサンブルアンフランセ公認インフルセンサー
  6. 「フランス語の仕事に就きたい」という人を応援するフランス語キャリアアドバイザー

1. N.T.さんのプロフィール

N.T.さんは早稲田大学政治経済学部をご卒業。

フランス映画を見たことをきっかけにフランス語に目覚められ、
フランス語は大学三年生の頃に始められました。

元々西洋絵画がお好きであり、卒業後は学生の頃からアルバイトをしていた画廊に契約社員として就職。

4年半の間画廊に勤められた後、フランスのパリにて2年間の語学留学をご経験。

語学留学の際は日仏文化協会( https://www.ccfj.com/ )で、留学に関するカウンセリングやアドバイスを受け、同時に語学学校やパリでの生活に関する情報収集もされたそうです。

日仏文化協会の概要を知りたい方は、こちらの記事も読んでみてね!


当初は語学留学を終えたらすぐに帰国するつもりでしたが、「もっとフランスに居たい!」という想いから、Institut National des Langues et Civilisations Orientales(フランス国立東洋言語文化学院、通称INALCO:イナルコ)の日本語学科に入学し、日仏の文芸翻訳を専攻。

5年かけてINALCOをご卒業され、日本へ帰国されます。

帰国後は株式会社国際ビジネスサポート(官公庁主催の国際会議への通訳者派遣及び企業における語学研修へ講師を派遣することを生業とする企業)に日仏翻訳者として登録。

管理人
管理人

実際は日仏翻訳者としてのお仕事はあまりなく、企業主催の語学研修を担当するフランス語講師として派遣されることになったそうです。

株式会社国際ビジネスサポートでフランス語講師を勤める傍ら、フランス留学経験を活かせる仕事は他にもあるだろうと考え、大使館、アンスティチュ・フランセ、大手フランス語学校、フランス商工会議所などの求人をチェック。

そして、1年半ほどフランス語講師として勤務されたのち、
在日フランス大使館の募集要項に記載されていたお仕事に転職をされ、現在に至ります。

2. N.T.さんの現在のお仕事はフランス政府系関係

というわけで、N.T.さんは現在フランス政府系のお仕事をされています。

具体的には、「日本におけるフランス留学経験者のネットワークを管理・運営・拡大していく業務」をご担当。

このフランス留学経験者のネットワークは全世界に広まっており、N.T.さんが担当されているのは、その内の1つである日本国内におけるフランス留学経験者のネットワークです。

N.T.さんから教えて頂いたのですが、

N.T.さん
N.T.さん

実はフランス語のように、政府主導で留学経験者のネットワークを作っている言語はあまりないんですよ!

とのこと。

ざっと調べてみたのですが、確かにイギリス留学経験者とドイツ留学経験者のネットワークはあるものの、他の言語は見つかりませんでした。

管理人
管理人

フランスはその文化政策において「フランス語を広めていく」ことも非常に重要視しています。

各国の言語政策の違いが、このような形で表れるというのは、非常に興味深いですね。

3. N.T.さんのフランス語の勉強方法

大学三年生の頃にフランス語の勉強を始めたN.T.さん。

きっかけは何かの拍子で見たフランス映画でした。

その時に見たパリの町並み、音楽、男女の会話、人々の生活の様子、そしてフランス語の独特の音に一目惚れしてしまい、「フランス語を勉強しよう!」と思い立たれたそうです。

というわけで、大学付近にフランス人の方が運営している小さいフランス語教室があり、勢いで授業の申込みを完了。

ゼロからいきなりフランス語で発音・文法・会話を習い始めるなんて、すごいですね!

管理人
管理人

ちなみに、習い始めてしばらく経った頃、「流石に文法は日本語で学びたい」と思うようになったため、文法の参考書を購入。

さらには東京日仏学院(現アンスティチュ・フランセ東京)にも通われたそうです。

その後めきめきと力をつけ、フランスへ語学留学に行かれただけでなく、フランスの大学まで卒業されたN.T.さん。

ご自身の勉強法を、詳しく教えて下さいました。

  • 文法は駿河台出版の『新・リュミエール』(著 森本 英夫・三野 博司)で勉強。
    繰り返し、繰り返し読み込んだ。
  • 単語や用例は「例文帳」(表にフランス語、裏に日本語訳を記載)を自分で作成し、移動中にひらすら覚えた。
  • フランス語で毎日日記を書いた。
    日記を書く際は、文章を破綻させないように、とりわけ時制に気をつけた。
  • めんどくさがらないで、分からない言葉や文法事項は、一つ一つ辞書や参考書で調べる。
    (調べる→覚える→忘れる→調べる→覚える→忘れる→・・・という作業を、地道に続けられたそうです。すごい!)
  • 外国人とペンフレンドになれるサイトを通じて、ネイティブと知り合いや友達になり、フランス語でメールのやりとりや話をする機会を積極的に作った。
管理人
管理人

以上の5つが、N.T.さんが取分け力を入れて取り組まれたことになります。

文法(文法の参考書)・単語(例文帳)・文章作成(日記)・読解(ネイティブとのメール)・会話(ネイティブとの会話)等、語学の習得に必要な要素が全て含まれていますね。

しかも、インプットだけでなくアウトプットの練習もふんだんに含まれています。
実は語学はインプットだけでなく、アウトプットも増やすことでぐんと力がつくんです!

集団講義の受講や参考書、ラジオの流しっぱなし等、インプットは比較的簡単に増やすことができます。

ですが、レッスン時の発言、日記などの文章作成、ネイティブとの会話などのアウトプットは、意識的に取り組まないと中々機会を増やすことが出来ません。

本当にすごく力が付くのて、アウトプットにも意識をおいて勉強をしてみて下さいね!

4. 現在の仕事で求められるフランス語以外の能力

N.T.さんはフランス政府系のお仕事をされていらっしゃるということもあり、当然同僚の多くはフランス人です。

仕事に使用する資料は勿論、会議もフランス語であることも多いため、相当のフランス語能力が必要です。

N.T.さん
N.T.さん

フランス語以外の能力としては、以下のことが求められると考えています。

  • イベント企画能力
  • イベント運営・実行力
  • 広報の知識
  • SNSに関する知識
  • Webサイト運営の知識

どれも、「ネットワーク会員の方々を増やすため」や「留学生ネットワークの会員の方々に充実したサービスを提供するため」に必要な能力・知識です。

この他にも、N.T.さんがご担当されているネットワークでは、フランス留学から帰国された方々を在日フランス企業とマッチングさせる機会も提供されています。

管理人
管理人

その機会を提供するために、主に在日フランス商工会議所と共同でセミナーを実施されているとのこと。

セミナー実施の際は、ご上司や同僚だけでなく、商工会議所のパートナーの方々と折衝したり、
関係者間のスケジュールや意見調整をする能力も必要となります。

管理人
管理人

こうやって見てみると、フランス語能力だけでなく、実務に必要な能力も求められることがわかりますね。

後述しますが、フランスの企業は即戦力を求める傾向があり、
実務経験や能力をとても重要視しています。

というわけで、フランス語を勉強することは勿論!

皆さんの現在のお仕事での成果や、仕事を通じて培われた実務経験は、「フランス企業」・「フランス語を使う仕事」というチャンスが舞い込んで来た時に、極めて役に立ちます。

ただね、

大好きなフランス語を使えない仕事になんて、あんまりモチベーションがわかない…。

という気持ち、とってもよく分かります。

管理人
管理人

だって何を隠そう、管理人がそうでしたから。

でも、ここは堪えましょう!

あまり良い言い方ではないですが、「履歴書を飾る」ことも大切です。

腐らずに一生懸命に今のお仕事に取り組み、実務スキルを伸ばすと共に、実績を出すように頑張ってください。

それが結果として、「大好きなフランス語を使える仕事」への近道となるはずです!

5. N.T.さんからフランコフォンの皆さんへのメッセージ

N.T.さんから皆さんに、3つのメッセージを頂きました。

5-1. 1つ目のメッセージ:フランス系の企業は即戦力を求めている

N.T.さん
N.T.さん

在日フランス商工会議所のパートナー企業とのやり取りを通じて分かったことですが、彼らは即戦力を求めて採用活動を実施しているので、新卒あるいは実務経験無しでフランス系の企業に就職をすることは難しいかも知れません。

もしフランス系の企業への就職も視野に入れられているなら、転職も視野に入れて、長いスパンで考えた方が良いと思います。

日本は新卒一括採用で、多くの研修やOJTを通じて時間をかけて手厚く社員を育てていくという傾向があります。

しかしながら、フランス企業の場合は実務経験の有無がとても重要視されます。

管理人
管理人

という事情もあってか、フランスでは無給であれ有給であれ、企業や行政機関等でインターンシップを試みる学生さんが非常に多いです。

フランスのビジネススクールや国立・私立大学の経済系の学部においては、ほとんどの場合インターンシップがカリキュラムに含まれていたり、カリキュラムに含まれていなくても、単位として認定されるようです。


N.T.さんの上記のメッセージは、厳しい現実のようにも感じますが、普段から在日フランス商工会議所のパートナー企業の方々とやり取りをしているN.T.さんだからこそ得られた、非常に貴重な情報だと思います。

それを我々に惜しみなく開示して下さり、本当に有難い限りです。

5-2. 2つ目のメッセージ:「今の経験は将来に生きる!」

N.T.さん
N.T.さん

仮にこれまでフランス語を使う仕事に就いていなかったとしても、何かの業務に長年携わってきた人には、その分野における実務経験と能力があります。

そしてその経験と能力は、「フランス語を使う仕事に転職したい」と思った時に、本当に役に立ちます。

フランス語を仕事で使いたいと思っている方は、「フランス語を使える仕事」にのみ価値を見出してしまうかも知れませんが、そんなことはありません。

今従事されていらっしゃるお仕事での経験・スキルの積み重ねこそが、将来の皆さんを輝かせる糧となります。

現在のお仕事に誇りを持って、「自分は夢に向かって真っ直ぐに進んでいるんだ!」と胸を張って頑張って下さい!

日本においても、第二新卒やポテンシャル採用を覗いて、転職時には即戦力が求められます。

そして新しい職場ですぐに活躍できるかどうかは、ご本人の能力に加えて、その業界における(あるいは業界で活かせる)経験やスキルが大切になることは言うまでもありません。

僕は転職前も現職も営業職に就いていました。

管理人
管理人

前職は飛び込み営業中心のバリバリの国内営業。

現在はメール重視の国際営業です。

営業の方法は変わりましたが、前職の経験は大いに活きています。

例えば、以下のことは訪問営業おいてもメール営業においても重要なスキルです。

  • 営業戦略の立て方
  • 提案を押タイミングと引くタイミング
  • そもそものベースとなる営業時のマインド
    (商品を売ろうとするのではなく、相手の役に立つ方法を考え、実行する)
管理人
管理人

前職でも腐らずに一生懸命やってきたことが、今の仕事にも活きているのだと実感しています。

5-3. 3つ目のメッセージ:「自分を信じて、好きなことに打ち込んで!」

N.T.さん
N.T.さん

今の職場の日本人やフランス人の同僚・上司もそうですし、最初に就職した画廊を辞めてフランスに長期で留学をした私もそうですが、世の中に本当に色々な人がいます。

まさに、十人十色です。

何か正解で、何が不正解かなんて、やってみなければ分かりません。

自分の人生を信じて、好きなことに目一杯打ち込んで、後悔をしないようにしてください

N.T.さんの仰るとおり、何が正解なんて、本当に分かりません。

管理人
管理人

本当はフランス語を使う仕事以外はしたくないけど、あんまりフランスに拘りすぎると、就職出来ないかも知れない。

そう思って、最初の就活の時に自分に嘘をついて守りに入った管理人は、結果として自分の希望とは全く異なる会社に就職することとなり、大いに失敗をしました。

ただその失敗を活かして、「今後は絶対にフランス語を使える仕事に就く!」と固い決心をして臨んだところ、人生が好転し、今の仕事に出会え、とても充実した生活を送れています。

だから、僕もN.T.さんのメッセージには大いに賛成です。

ご自身の人生を信じて、好きなことに目一杯打ち込んでいって下さい!

À très bientôt
Kei

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